レッドブル・ホンダ無念、しかし色々なことが起こりすぎた【F1オーストリアGP 2020決勝】

レッドブル・ホンダ無念、しかし色々なことが起こりすぎた【F1オーストリアGP 2020決勝】

こんにちは。2010年シーズンのF1開幕戦となったオーストリアGPの決勝が終わりました。新型コロナウイルス感染拡大による開幕の延期で200日以上ぶりとなった決勝レースですが、とんでもないサバイバルレースとなりました。あまりにもいろいろなことが起こりすぎましたが、ピックアップして振り返りたいと思います。

予選

まずは土曜日の予選から振り返っていきたいと思います。以下が予選の結果です。

順位ドライバーチーム
1BOTバルテリ・ボッタスメルセデス
2HAMルイス・ハミルトンメルセデス
3VERマックス・フェルスタッペンレッドブル・ホンダ
4NORランド・ノリスマクラーレン・ルノー
5ALBアレクサンダー・アルボンレッドブル・ホンダ
6PERセルジオ・ペレスレーシングポイント・メルセデス
7LECシャルル・ルクレールフェラーリ
8SAIカルロス・サインツマクラーレン・ルノー
9STRランス・ストロールレーシングポイント・メルセデス
10RICダニエル・リカルドルノー
11VETセバスチャン・ベッテルフェラーリ
12GASピエール・ガスリーアルファタウリ・ホンダ
13KVYダニール・クビアトアルファタウリ・ホンダ
14OCOエステバン・オコンルノー
15GROロマン・グロージャンハース・フェラーリ
16MAGケビン・マグヌッセンハース・フェラーリ
17RUSジョージ・ラッセルウィリアムズ・メルセデス
18GIOアントニオ・ジョビナッツィアルファロメオ・フェラーリ
19RAIキミ・ライコネンアルファロメオ・フェラーリ
20LATニコラス・ラティフィウィリアムズ・メルセデス

DASはタイヤのウォームアップ用

冬の開幕前テストから話題になっていたメルセデスのDASステアリングを前後に動かすことでタイヤのトー角度を変えることができる仕組みです。パルクフェルメルールにより予選が始まるとセッティング変更が許されないサスペンションを可動させているとレッドブルから指摘が入りましたが、FIAはDASはステアリングシステムの一部であるとし今年のレギュレーションには合法であるとグランプリ中に改めて公表しました。来年からはこのような仕組みは禁止となります。

そのDASですが、テストではラップ中にストレートで手前に引くということをしていたため、ラップタイムを上げるためのものかと思っていました。しかしフリー走行や予選の様子を見ていると、アタックラップ中に使うのではなく、その前のウォームアップラップ中に使っています。1周が短いサーキットの中で効率よくフロントタイヤに熱を入れるために使っているようです。メルセデスは毎年何かしら革新的なデバイスを投入している気がします。それだけ挑戦的な設計を模索できる王者の余裕といったところでしょうか。

ボッタス、余裕の芝刈り

ハミルトンを僅差で抑えてポールポジションを獲得したのはボッタスでした。しかしポールポジションに繋がったアタックラップはQ3の1回目のランで、2回目は4コーナー出口でアウトに膨らみ砂利と芝生の上を走行します。長いことコース外を走りコースに復帰する直前にはスピンしていました。その後の無線では「芝刈りしてただけだよ」「これ家にある芝刈り機より刈れるね」と余裕のジョーク。ボッタスは静かなタイプですが何気にユーモアに溢れています。

ちなみにそのときの無線がこちらです。チームからの返答は「メルセデスが芝刈り機作ってるとは知らなかった、ちょっと調べてみよ」でした。

下馬評通りのレーシングポイント、期待外れのフェラーリ

冬のテストから速い速いと言われていたピンクメルセデスことレーシングポイントですが、その速さは本物でした。ペレスが6位、ストロールが9位と2台でQ3に進んでいます。一方でフェラーリは残念なことになっています。精一杯やったというベッテルがQ2で敗退、Q3に進んだルクレールも7番手止まりでした。どうもストレートスピードが遅くハースやアルファロメオも沈んでおり、昨年の疑惑のパワーユニットが使えなくなり規制が強化された影響が出ているのかもしれません。

ハミルトンの黄旗無視のペナルティが出るのが遅い

Q3の2回目のランでボッタスがコース外にはみ出したことにより大量の煙が上がり、イエローフラッグが提示されました。これによりその後ろにいたドライバーが影響を受けなかなかタイムを伸ばせませんでしたが、その中でハミルトンはタイムを更新しました。インタビューでハミルトンはイエローフラッグが見えなかったと話しており、スチュワードもイエローフラッグとグリーンフラッグが同時に出ていたような状況を踏まえてお咎めなしとしていました。

しかし決勝日になってレッドブルの指摘を受け再度検証を行い、ハミルトンに3グリッド降格のペナルティが課されます。レッドブルが証拠映像を提出したとのことですが、スチュワードは最初からチームが出せるような映像は自ら出して検証すべきなのではないかなと思います。また一度出した裁定を覆すことはあってはならないです。去年の日本GPのルクレールとフェルスタッペンの接触についての裁定を思い出します。

決勝

決勝は9台リタイアの波乱のレースとなりました。以下決勝の結果です。

順位ドライバーチーム
1BOTバルテリ・ボッタスメルセデス
2LECシャルル・ルクレールフェラーリ
3NORランド・ノリスマクラーレン・ルノー
4HAMルイス・ハミルトンメルセデス
5SAIカルロス・サインツマクラーレン・ルノー
6PERセルジオ・ペレスレーシングポイント・メルセデス
7GASピエール・ガスリーアルファタウリ・ホンダ
8OCOエステバン・オコンルノー
9GIOアントニオ・ジョビナッツィアルファロメオ・フェラーリ
10VETセバスチャン・ベッテルフェラーリ
11LATニコラス・ラティフィウィリアムズ・メルセデス
リタイアKVYダニール・クビアトアルファタウリ・ホンダ
リタイアALBアレクサンダー・アルボンレッドブル・ホンダ
リタイアRAIキミ・ライコネンアルファロメオ・フェラーリ
リタイアRUSジョージ・ラッセルウィリアムズ・メルセデス
リタイアGROロマン・グロージャンハース・フェラーリ
リタイアMAGケビン・マグヌッセンハース・フェラーリ
リタイアSTRランス・ストロールレーシングポイント・メルセデス
リタイアRICダニエル・リカルドルノー
リタイアVERマックス・フェルスタッペンレッドブル・ホンダ

期待のフェルスタッペンは早々にリタイア

オランダGPが中止となり実質の母国GPとなったフェルスタッペンですが、残念な結果となってしまいました。予選ではメルセデスに差を付けられたもののタイヤ戦略とレースペースに自信を見せていたレッドブル・ホンダ陣営でしたが、ミディアムタイヤスタートのメリットを生かすことができないままマシントラブルでリタイアとなりました。この記事を書いている時点では原因は明らかになっていませんが、アンチストールが作動し続けるという状態でした。

フェルスタッペンがリタイアし、メルセデスのワンツー、3位にアルボンが確定かな、とこの時点では思っていましたが、決してそんなことはありませんでした

攻撃性の高い縁石

毎年このサーキットの縁石は話題になります。サスペンションを壊したり、フロアを傷つけたり。そして今年はセンサーへの悪影響でした。レーシングポイントのストロールがセンサーの問題でリタイア。そこからトップを走るメルセデスの2台にはチームから頻繁に無線が飛びました。無線の内容は「ギアボックスセンサーに深刻な問題があるから縁石を避けろ」というもので、どうやら縁石の上を走ったときの振動でセンサーが異常値を示しフェイルセーフが働いてしまうようです。ストロールのリタイアをメルセデス勢が気にしていることを見ると、メルセデスのギアボックス共通の問題だったのかもしれません。関係があるかはわかりませんが、ウィリアムズのラッセルもマシントラブルでリタイヤしています。

縁石が直接の原因かはわからないものの、アルファロメオのライコネンも縁石に乗り上げた際にタイヤが外れてリタイア、アルファタウリのクビアトも左リアのサスペンションが折れたことでタイヤがバーストしリタイアするなど、縁石によるダメージの蓄積はマシンに悪影響を与えていたようです。

精彩を欠くベッテル

どうもマシンが安定しないフェラーリの特にベッテルですが、セーフティカーのリスタート後にサインツに追突、スピンしてしまいます。確かにイン側は空いていましたが、少しオーバースピードで楽観的すぎる飛び込みだったと思います。しかし突っ込まれたほうではなく突っ込んだほうがスピンしてしまうことがベッテルは多いですね。

アルボンの優勝へのギャンブルがハミルトンに砕かれる

3回目のセーフティカーでメルセデス勢2台はステイアウトしましたが、3位を走っていたアルボンはピットインしソフトタイヤに履き替えました。結果ペレスに先を行かれますがすぐに抜き返し、問題を抱えているメルセデス勢を抜きにかかります。あくまで勝ちを狙いに行くレッドブルらしいギャンブル戦略だと言えます。

結果的にはアウトからオーバーテイクを仕掛けたアルボンにハミルトンが横からぶつける形になり、アルボンはリタイアとなってしまいました。去年のブラジルGPでの接触を思い出してしまいますが、今回もハミルトンに責任があると判断され5秒加算ペナルティが課されました。アルボンが失ったもの(しかも2回目)を考えると軽いペナルティにも思えてしまいますが、そこは感情的な面は抜きにして1つ1つのインシデントを個別に判断していく必要がありますね。しかし去年のルクレールとフェルスタッペンの横並びと違いアウト側のアルボンが前に出ていたので、1台分残さなかったハミルトンの走りは理解できません(接触後「なんだよ」というように手を上げているのも)。

ファンの投票によるドライバー・オブ・ザ・デイはアルボンでした。フェルスタッペンが早々にいなくなり、打倒メルセデス、そして初の表彰台が目前だったアルボンへの同情の票だったのかもしれません。

ノリス、最終ラップで本気のファステスト

ハミルトンに5秒加算ペナルティが課されたことで、4位を走行していたノリスにも表彰台のチャンスが見えてきました。要はハミルトンの5秒以内でゴールすれば順位が逆転するということですが、メルセデス勢はトラブルを抱えており本気の走行ができない状態でした。また、ハミルトンはリスク承知でボッタスの前に出て本気で走るという選択肢もあったのかもしれませんが、メルセデスはその選択は流石にしませんでした。結果的にノリスがファイナルラップでファステストラップを記録し、ハミルトンの約4.8秒後にフィニッシュ。F1で自身初の表彰台を獲得しました。競争力を増したレーシングポイントを上回り、本気のラップを見せてくれました。

ルクレールがちゃっかり表彰台

フリー走行からなかなか目立てていなかったフェラーリですが、ルクレールが終盤にペレス、ノリスとオーバーテイクしていき、ハミルトンのペナルティもあって結局2位でフィニッシュしました。正直Q3に行くのがやっとという状態のフェラーリが表彰台に乗るとは誰も想像できなかったと思います。ルクレールの堅実でいてアグレッシブな走りが2位という結果に繋がったのだと思います。


話題を絞って書いたつもりでしたがかなり長くなってしまいました。それだけ色々なことが起こりすぎたグランプリでした。レッドブル、そしてホンダにとっては非常に残念な結果となってしまいましたが、待ちに待ったF1グランプリは大満足のものとなりました。久しぶりの荒れたサバイバルレースで、シャットダウン期間が長かったことも影響しているのかなと思いますが、何レースできるか確定していない過密かつ短期決戦の2020年シーズンの今後にも期待できます。

次戦も同じレッドブルリンクでのレースですが、名前はシュタイアーマルクGPとなります。そして来週すぐにあります。来週といっても木曜には作業が始まりますからすぐ目前です。今回決勝で初めて気温が上がったり、縁石によるダメージが問題になりましたが、それをすぐ数日後、そして移動や作業できる人数が制限されているこの状況でどこまで対策ができるのか注目です。今度こそレッドブル・ホンダには良い結果を残してもらいたいものです。チームの母国GPが2週間連続で開催されることは二度と無いかもしれません。今回ノーポイントとなった悔しさを跳ね返してほしいですね。

それではまた。

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