こんにちは。F1史上初の2週間連続同一サーキットでの開催となったシュタイアーマルクGPが終了しました。結果はハミルトンがポール・トゥ・ウィン。結果としてはメルセデスが2連続でポール・トゥ・ウィンを飾る結果となりましたが、今回も各所で白熱したバトルを見ることができました。今回もピックアップして振り返っていきたいと思います。
ペレスの速さは本物、ハミルトンは王者の余裕、一方のフェラーリは・・・【F1シュタイアーマルクGP 2020決勝】
先週のアルボンとハミルトンの接触について
早速シュタイアーマルクGPの話題から外れてしまうのですが、先週のオーストリアGPでまたしてもアルボンが初表彰台を逃す原因となったハミルトンとの接触について振り返りたいと思います。というのも、アルボンを擁護できる新たな映像を見つけたからです。それがこちらです。
先週のオーストリアGPで、アルボンが同じターン4でベッテルをオーバーテイクしたときの、ベッテルのオンボード映像です。アルボンはハミルトンを抜きに行ったときとほとんど同じ動きをしています。また2台の位置関係についても、コーナーの真ん中ではアウト側のアルボンが既に前に出ている点も同様です。このとき2台は接触することはありませんでした。
一方こちらがアルボンとハミルトンの接触シーンです。22秒頃からハミルトンのオンボード映像を見ることができますが、同じように前に出ているアルボンに対し切り込んでいく形で接触しています。ハミルトンのステアリングは90度回しただけの状態で、それ以上切ろうという動きは一切見られません。まるでレーシングラインに戻ろうかという動きに見えます。
今回のシュタイアーマルクGPでも同じターン4でアウトからのオーバーテイクがいくつも見られました。しかし接触は見られませんでした。終盤のペレスとアルボンの接触はありましたが、あれはペレスがインから抜いていこうというところでの接触で、あのときもアルボンが前に出ている状態での接触だったため、アルボンに非はないと考えています。レースでは前に出ているほうに優先権があるのが基本です。抜こうとするほうでも抜かれようとするほうでも、前に出られているのであれば接触はできる限り避けなければなりません。先週のハミルトンの動きからは一切接触を避けようとする動きが見られなかったうえ、アルボンに抗議をするようなジェスチャーもあったため、現役最強ドライバーの振る舞いとしては受け入れられないというのがファンとしての感想です。TwitterやYouTubeのコメントを見ると意外にもハミルトンへのペナルティが厳しいという声があったため、改めて自分の考えを書きました。
予選
というわけで、大雨となった予選から振り返っていきたいと思います。結果がこちらです。
順位 | ドライバー | チーム | ||
---|---|---|---|---|
1 | HAM | ルイス・ハミルトン | メルセデス | |
2 | VER | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | |
3 | SAI | カルロス・サインツ | マクラーレン・ルノー | |
4 | BOT | バルテリ・ボッタス | メルセデス | |
5 | OCO | エステバン・オコン | ルノー | |
6 | NOR | ランド・ノリス | マクラーレン・ルノー | |
7 | ALB | アレクサンダー・アルボン | レッドブル・ホンダ | |
8 | GAS | ピエール・ガスリー | アルファタウリ・ホンダ | |
9 | RIC | ダニエル・リカルド | ルノー | |
10 | VET | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | |
11 | LEC | シャルル・ルクレール | フェラーリ | |
12 | RUS | ジョージ・ラッセル | ウィリアムズ・メルセデス | |
13 | STR | ランス・ストロール | レーシングポイント・メルセデス | |
14 | KVY | ダニール・クビアト | アルファタウリ・ホンダ | |
15 | MAG | ケビン・マグヌッセン | ハース・フェラーリ | |
16 | RAI | キミ・ライコネン | アルファロメオ・フェラーリ | |
17 | PER | セルジオ・ペレス | レーシングポイント・メルセデス | |
18 | LAT | ニコラス・ラティフィ | ウィリアムズ・メルセデス | |
19 | GIO | アントニオ・ジョビナッツィ | アルファロメオ・フェラーリ | |
20 | GRO | ロマン・グロージャン | ハース・フェラーリ |
ハミルトン、お手本のような走り
ハミルトンについて色々書きましたが、やはり現役最強・最速のドライバーであることに変わりはないということを感じさせる予選の走りでした。2位のフェルスタッペンに圧倒的な差を付けたポールラップ。フェルスタッペンは最終ラップのミスが無くても届かなかっただろうとインタビューで話しています。ドライとウェットでは大きくラインは変わりますが、マシンを真っ直ぐ向け、正確にトラクションをかけていく、それでいて使う縁石は使う、という極限の走りを見せてくれていると思います。中継で「この映像見てから予選やったらタイム上がりそう」というような話をしていたのが印象的でした。それだけお手本のような走りでした。
クラッシュがほぼ無かった
ひどいコンディションで前に車がいるとかなり視界が悪い状態ではありましたが、壁にぶつけたのはジョビナッツィだけでした。3回目のフリー走行は中止となり雨の中で走ることは今シーズン初めてではありましたが、流石に世界のトップドライバーたちということなのでしょう。
決勝
決勝は晴れてドライでのレースとなりました。結果はこちらです。
順位 | ドライバー | チーム | ||
---|---|---|---|---|
1 | HAM | ルイス・ハミルトン | メルセデス | |
2 | BOT | バルテリ・ボッタス | メルセデス | |
3 | VER | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | |
4 | ALB | アレクサンダー・アルボン | レッドブル・ホンダ | |
5 | NOR | ランド・ノリス | マクラーレン・ルノー | |
6 | PER | セルジオ・ペレス | レーシングポイント・メルセデス | |
7 | STR | ランス・ストロール | レーシングポイント・メルセデス | |
8 | RIC | ダニエル・リカルド | ルノー | |
9 | SAI | カルロス・サインツ | マクラーレン・ルノー | |
10 | KVY | ダニール・クビアト | アルファタウリ・ホンダ | |
11 | RAI | キミ・ライコネン | アルファロメオ・フェラーリ | |
12 | MAG | ケビン・マグヌッセン | ハース・フェラーリ | |
13 | GRO | ロマン・グロージャン | ハース・フェラーリ | |
14 | GIO | アントニオ・ジョビナッツィ | アルファロメオ・フェラーリ | |
15 | GAS | ピエール・ガスリー | アルファタウリ・ホンダ | |
16 | RUS | ジョージ・ラッセル | ウィリアムズ・メルセデス | |
17 | LAT | ニコラス・ラティフィ | ウィリアムズ・メルセデス | |
リタイア | OCO | エステバン・オコン | ルノー | |
リタイア | LEC | シャルル・ルクレール | フェラーリ | |
リタイア | VET | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ |
フェラーリが同士討ちでダブルリタイア
先週のオーストリアGPではルクレールがまさかの2位表彰台となったフェラーリですが、今週は散々な結果となってしまいました。ルクレールがベッテルに追突する形で乗り上げ、ベッテルはリアウィングを失いリタイア、走行を続けたルクレールもフロアへのダメージが大きく数周後にリタイアとなってしまいました。先週と比べて調子を上げてきていたベッテルですが、その速さをレースで見せる前に週末が終わってしまうという形になりました。
A double disaster for Ferrari on Lap 1 of the Styrian Grand Prix 💥
— Formula 1 (@F1) July 12, 2020
Vettel and Leclerc collide - and within minutes both are back in the garage#AustrianGP 🇦🇹 #F1 pic.twitter.com/yMs3rvPfa8
このアクシデントについてルクレールはすぐに謝罪のコメントを発表しています。序盤でマシンが混み合う中で無理をしてしまったのでしょうか。下位に下がれば下がるほどレース序盤での接触の可能性は上がっていくため、今年はスタート後は要注意です。ベッテルは今年がフェラーリ最後の年、またF1最後の年である可能性もありますが、今シーズン有終の美を飾ることはマシンのパフォーマンス的にもツキの面でも難しいかもしれません。
各所で良いバトル
先週のレースでは何度もセーフティカーが入ったことにより接近戦が繰り広げられましたが、今回はセーフティカーが無く各車1ストップのレース戦略であったものの各所でバトルが見られました。特に中団グループのマクラーレン、ルノー、レーシングポイント、そしてその後ろのアルファタウリ、ハース、アルファロメオあたりのバトルが熾烈でした。今回は速いはずのレーシングポイントが雨の予選で沈んだことで決勝が白熱した面もありますが、それを抜きにしても中団グループ以降はマシン差が接近しており、今後も良いバトルが期待できそうです。上位はメルセデスとレッドブルの差がまだ少しあるなあという感じで、レッドブルがもう少し頑張ってくれれば優勝争いも面白くなっていきそうだなと感じます。
ペレス、最後は残念だったが良い走り
今回のレースで一番目立っていたのはレーシングポイントのペレスでしょう。予選で下位に沈んだものの決勝で着実に追い上げ、いくつもオーバーテイクを見せてくれました。ザウバーで小林可夢偉と争いながら表彰台にも登っていた頃のペレスを思い出します。若いドライバーの活躍が目立ち始めもうベテランの枠に入っているペレスですが、良いマシンに乗ればまだまだ良い走りができそうなところを見ることができました。
最後のアルボンとの接触で順位を落としてしまったことは残念でしたが、納得のドライバー・オブ・ザ・デイ選出でした。レーシングポイントは週末を完璧にこなせば表彰台に何度か登ることもできるかもしれません。
速さが足りないアルボン
フェルスタッペンが速すぎるというのも大きな要因なのかもしれませんが、昨年のガスリーにしろアルボンにしろやはりフェルスタッペンに対し遅れを取ってしまい、メルセデス対レッドブルという構図に入り込むことができていません。ボッタスも決してハミルトンに対して遅れを取っていないということはありませんが、少なくとも同じ土俵の中で共通の敵と戦うということはできています。アルボンのレースペースが悪いことで、完全に2対1というフェルスタッペンにとっては厳しい状況になってしまいました。4位のアルボンと大きく離れたことでボッタスは第1スティントを伸ばすという選択を取ることができ、終盤でのフェルスタッペンとのバトルを優位に進めることができたわけです。
アルボンは最終的に、驚異的な追い上げを見せていたペレスにも追いつかれ、ターン4で接触という結果になってしまいます。今回はスピンすることがなくペレスがウィングを破損したため4位を守ることができましたが、レーシングポイントが予選できちんと上位に入ってくると、4位の座も危うくなってくるかもしれません。今すぐアルボンと代わるドライバーはいませんが、レッドブルのことなので体たらくだといつでもガスリーやクビアトと入れ替える準備はできているかもしれません。フェルスタッペンを超えることは難しいかもしれませんが、セカンドドライバーとしてレース戦略のアシストができるくらいのパフォーマンスは見せてほしいものです。
アルファタウリ、アルファロメオ、ハース、ウィリアムズが紛らわしい
レース内容とは直接関係ありませんが、正面から撮った映像を見るときアルファタウリ、アルファロメオ、ハース、ウィリアムズの4チームがみんな全体的に白っぽくて紛らわしいです。アルファタウリとアルファロメオに至っては名前も似ていてさらにややこしいです。アルファタウリは昨年のトロロッソのカラーリングが好きだったのになあと思いますし、ハースもリッチエナジーと契約する前のカラーリングに戻り、似た車が増えたなあと感じます。上位はいい感じに塗り分かれているので下位も上手いこと調整してほしいです。
ハミルトン、14年連続で勝利を上げる
ハミルトンが今回優勝したことにより、2007年のデビューイヤーからなんと14年連続で勝利を上げているということになりました。常に最速のマシンに乗っていたならまだしも、2009年など開幕でかなり出遅れたような年でも確実に勝利を上げているというのは本当に最強のドライバーなんだと感じさせます。レース以外にも活動の幅を広げ、レースでは王者の余裕を見せるハミルトンですが、いったいどこまで進化していくのでしょうか。この記録があと何年伸びていくのか注目です。
14 seasons in F1
— Formula 1 (@F1) July 12, 2020
14 seasons with at least one race win
An amazing winning streak from an amazing driver #AustrianGP 🇦🇹 #F1 @LewisHamilton pic.twitter.com/WqimjmYznZ
じわじわくるソーシャルディスタンス表彰式のトロフィー授与
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、F1も新しい様式での運営が求められています。その象徴となっているのが表彰式です。昨年まではガレージの上にある表彰台で、グランドスタンドから良く見える位置で表彰式が行われていましたが、今年はグランドスタンドをバックにホームストレート上で行われています。ドライバーが立つ台も1人ずつ間隔を開けて置かれており、セレモニーに参加できるチームスタッフの数も限られているようです。どうしても盛り上がりには欠けるものの、ホームストレートを広く使い、ディスプレイ上のCGではなく実際の国旗が掲げられる今年の表彰式のほうが自分は好きかもしれません。
そして今回からの新しい取り組みで目立っていたのが、ラジコンによるトロフィー授与です。トロフィーの乗った台がラジコン操作でドライバーの前まで移動し、ドライバー自らトロフィーを掴むという方式になっています。このトロフィー台の移動が見ていてじわじわ来ます。
この動画の1分59秒頃からがそのシーンです。スタッフに押され動き出した台がヨロヨロしながらハミルトンの少し手前で停止します。中継で「止まる位置がF1らしくない」と言われていて笑ってしまいました。ハミルトンとフェルスタッペンが顔を見合わせているのも面白いです。その後のコンストラクターへのトロフィー台もフラフラしながら移動しています。F2の表彰式の時点で導入されており話題になっていましたが、F1までに動きの正確性を修正することはできなかったようです。トロフィー台のドライバーの腕も必要ですね。
チャンピオンシップ
ドライバーズチャンピオンシップ
順位 | ポイント | ドライバー | チーム | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 43 | BOT | バルテリ・ボッタス | メルセデス | |
2 | 37 | HAM | ルイス・ハミルトン | メルセデス | |
3 | 26 | NOR | ランド・ノリス | マクラーレン・ルノー | |
4 | 18 | LEC | シャルル・ルクレール | フェラーリ | |
5 | 16 | PER | セルジオ・ペレス | レーシングポイント・メルセデス | |
6 | 15 | VER | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | |
7 | 13 | SAI | カルロス・サインツ | マクラーレン・ルノー | |
8 | 12 | ALB | アレクサンダー・アルボン | レッドブル・ホンダ | |
9 | 6 | GAS | ピエール・ガスリー | アルファタウリ・ホンダ | |
10 | 6 | STR | ランス・ストロール | レーシングポイント・メルセデス | |
11 | 4 | OCO | エステバン・オコン | ルノー | |
12 | 4 | RIC | ダニエル・リカルド | ルノー | |
13 | 2 | GIO | アントニオ・ジョビナッツィ | アルファロメオ・フェラーリ | |
14 | 1 | KVY | ダニール・クビアト | アルファタウリ・ホンダ | |
15 | 1 | VET | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | |
16 | 0 | LAT | ニコラス・ラティフィ | ウィリアムズ・メルセデス | |
17 | 0 | RAI | キミ・ライコネン | アルファロメオ・フェラーリ | |
18 | 0 | MAG | ケビン・マグヌッセン | ハース・フェラーリ | |
19 | 0 | GRO | ロマン・グロージャン | ハース・フェラーリ | |
20 | 0 | RUS | ジョージ・ラッセル | ウィリアムズ・メルセデス |
コンストラクターズチャンピオンシップ
順位 | ポイント | コンストラクター | |
---|---|---|---|
1 | 80 | メルセデス | |
2 | 39 | マクラーレン・ルノー | |
3 | 27 | レッドブル・ホンダ | |
4 | 22 | レーシングポイント・メルセデス | |
5 | 19 | フェラーリ | |
6 | 8 | ルノー | |
7 | 7 | アルファタウリ・ホンダ | |
8 | 2 | アルファロメオ・フェラーリ | |
9 | 0 | ウィリアムズ・メルセデス | |
10 | 0 | ハース・フェラーリ |
というわけで今回はF1史上初の2週間連続同一サーキット開催となったシュタイアーマルクGPを振り返りました。そして、来週はハンガリーに場所を移して3週間連続開催となります。今回は先週のレース内容も踏まえてある程度データを溜めた状態で臨んだグランプリでしたが、来週はガラッと雰囲気が変わって灼熱のハンガロリンクとなります。昨年はハミルトンとフェルスタッペンの一騎打ちが見れましたが今年はどんなレース展開になるんでしょうか。今から楽しみです。今年は開幕が遅かった代わりにF1不足になる暇が無くて幸せですね。
それではまた。