F1マシン最低重量レギュレーションの変遷(1994~2024)
F1では、競技の公平性を担保するため、そして過度な軽量化による安全性の低下を防ぐため、レギュレーションで車体の最低重量が定められています。これまで様々な要因によって最低重量が引き上げられてきましたが、近年はエンジンより重量のあるパワーユニットの導入により、最低重量が大きく引き上げられました。ドライバーの体重や着用物込みでの最低重量が設定された1995年以降、最低重量がどのように変化してきたのかをまとめました。
最低重量引き上げに関するトピック
大きく変化があったタイミングは以下が挙げられます。
KERSの導入
2009年にKERS(運動エネルギー回生システム)が導入されました。搭載は任意で、約40kgあるKERSを搭載したチームは車体のバランス調整が難しくなり、特にシーズン序盤で苦戦しました。
KERS搭載による重量面での不公平を無くすため、2010年に最低重量が引き上げられましたが、チーム間での協定によりKERSを使用しないこととなりました。
開発により軽量化が進んだKERSは2011年に再導入されましたが、この年も最低重量は引き上げられ、2009年と比べて35kgの増加となりました。
パワーユニットの導入
2014年にそれまでの内燃エンジンからハイブリッドシステムのパワーユニットに切り替わりました。KERSと同様のシステムのMGU-K、排熱を利用したMGU-Hの導入、バッテリーの重量増加に伴い車体の重量は大きく増加し、最低重量も691kgまで引き上げられました。
2020年、2021年にもパワーユニットに関するレギュレーションの変更に伴い、車体の最低重量が引き上げられています。
車体・タイヤの大型化
2017年と2022年に車体全般に関するレギュレーション変更があり、ウィングやタイヤが大型化しました。それにより最低重量も引き上げられています。また、ドライバーの安全を守るHALOもかなりの重さがあり、2018年に最低重量が引き上げられました。
最低重量の一覧
年 | 最低重量 | 備考 |
---|---|---|
1995 | 595kg | 車体最低重量にドライバーの体重を含むよう変更 |
1996 | 600kg | +5kg(+0.8%) |
1997 | 600kg | |
1998 | 600kg | |
1999 | 600kg | |
2000 | 600kg | |
2001 | 600kg | |
2002 | 600kg | |
2003 | 600kg | |
2004 | 600kg | 予選時のみ605kgに変更 |
2005 | 600kg | |
2006 | 600kg | |
2007 | 605kg | 全セッションで605kgに変更 +5kg(+0.8%) |
2008 | 605kg | |
2009 | 605kg | KERS導入により搭載チームが重量面で不利に |
2010 | 620kg | KERS搭載による不公平を無くすため増加 +15kg(+2.5%) |
2011 | 640kg | 前年と同じ理由によりさらに増加 +20kg(+3.2%) |
2012 | 640kg | |
2013 | 642kg | タイヤの設計変更により増加 +2kg(+0.3%) |
2014 | 691kg | パワーユニットの導入により増加 +49kg(+7.6%) |
2015 | 702kg | +11kg(+1.6%) |
2016 | 702kg | |
2017 | 728kg | 車体レギュレーションの変更に伴い増加 +26kg(+3.7%) |
2018 | 734kg | HALO導入により増加 +6kg(+0.8%) |
2019 | 743kg | ドライバーの過度な減量を防ぐため増加 +9kg(+1.2%) |
2020 | 746kg | PU監視エレメントが追加されたため増加 +3kg(+0.4%) |
2021 | 752kg | PUの最低重量引き上げに伴い増加 +6kg(+0.8%) |
2022 | 798kg | 車体レギュレーションの変更に伴い増加 +46kg(+6.1%) |
2023 | 798kg | |
2024 | 798kg |
2026年のレギュレーション変更では、車体を小さく軽くする方向で検討が進められています。一部報道では50kgほどの軽量化を目指しているとのことで、オーバーテイクのしやすさなどレースに与える影響が注目されています。