【F1日本GP】鈴鹿サーキットの観戦席の数を数えてみた【開催権料】

こんにちは。

日本国内のF1人気は回復傾向にあり、初めての春開催となった2024年のF1日本GPでは、フジテレビ地上波放送があった頃と同じ水準の日曜日10.2万人が現地観戦に訪れました。2022年には16年ぶりにチケット完売のニュースもありましたが、実際のところ指定席チケットは何枚発売されていたのか各観戦席の座席表を使って数えてみました。高額な開催権料とチケット収入についても考えてみました。

観戦席の席数は毎年変わる

新型コロナウイルス感染症の影響による2回の中止を経て3年ぶりの開催となった2022年のF1日本GPは、ホンダがパワーユニットを供給するレッドブルとマックス・フェルスタッペンのワールドチャンピオンとしての凱旋や、角田裕毅の初の母国GPとあって、2006年以来16年ぶりにチケットが完売したと話題になりました。2006年といえばミハエル・シューマッハの現役引退前最後の日本GP、そして翌年から富士スピードウェイへ開催地を移すことが決定していたなかでの最後の鈴鹿サーキットでの開催であり、日曜日16.1万人、3日間合計で36.1万人の観客動員数でした(後にシューマッハは現役復帰、開催地も2009年から鈴鹿サーキットに戻っています)。

では完売の2022年もそれだけの観客を集めたかというとそうではありません。サーキットには常設の観戦席のほかにイベント規模に合わせて仮設の観戦席が用意されます。2006年は国内のF1人気のピーク時期であり、大量の仮設席が用意されました。2007年以降、富士スピードウェイでのずさんな運営や金融危機による日本メーカーの撤退などが重なりF1人気は一気に失速し、2017年には日曜日6.8万人、3日間で13.7万人(2006年比で6割減)まで落ち込みます。当然前年からの見込みに合わせた仮設席の用意に留まるわけで、2022年は2019年からの来場者数予想に対してそれを上回る需要があり完売しただけ、というわけでした。

ちなみに2022年は日曜日9.4万人、3日間合計では小林可夢偉が3位表彰台に上がった2012年以来の20万人超えとなりました。過去の日本GPの観客動員数はこちらのページにまとめていますので合わせてご覧ください。

観戦席の席数を数えてみた

F1日本GPは金曜日・土曜日・日曜日の3日間の日程で行われます。そのうち土曜日と日曜日は西エリアを除いて座席指定となっており、チケット購入時に選択した座席にしか着席できません。そのため、座席表の席数を数えればおおよその指定席チケットの販売数が分かるというわけです。

というわけで鈴鹿サーキット公式ページの座席表の情報を元に2024年F1日本GPの観戦席数を数えてみました

観戦席の場所別の席数

観戦席はその場所によって大きく分けられています。鈴鹿サーキットのF1日本GP公式ページで各観戦席の座席表が公開されているので、それを使って席数を数えました。

観戦席 場所 席数
V1 グランドスタンド 5,116
V2 グランドスタンド 7,350
Q1 シケイン 1,124
Q2 シケイン 3,290
A1 メインストレート 3,273
A2 メインストレート 2,008
B1 1~2コーナー 1,232
B2 1~2コーナー 4,544
C 2コーナー~S字 8,120
D S字~逆バンク 9,530
E NIPPOコーナー 4,780
G 130R 3,681
H 110R 552
I ヘアピン 2,159
R 最終コーナー 2,386
S 最終コーナー 2,112
合計 61,257

席数は合計で61,257席となりました。なお、この数には車いす席やR-BOXなどの特殊な席も含んでおり、複数人で利用する定員制の席については1でカウントしています。また、非常に細かい座席表を自分で数えたので、数え間違いが十分に考えられます。具体的な数は参考程度にご覧ください。

規模としてはやはりグランドスタンドが最も大きく、グランドスタンドだけで1.2万人、全体の約2割を収容できます。D席も範囲が広いため1万人弱の席数ですが、ひとかたまりの観戦席でいうとホンダRBPT応援席となっているC席が約8,000席と大規模です。

常設席・仮設席の数

続いて、常設席・仮設席それぞれの席数を数えました。近年の需要の高まりに応じて2024年は仮設席がいくつか追加されました。

席種 席数
常設席 51,510
仮設席 9,747

全体の約16%が仮設席となりました。仮設のため設備や座席までのアクセスに差はありますが、全体的に常設席の上段など高い位置に設けられることが多く、見晴らしの良さに需要がありそうです。私は2006年当時はまだF1を見ていなかったのですが、一体どれだけの仮設席があったのか気になります。ちなみに2017年に1席あたりの幅が広げられているので、常設席のみでの席数は2006年よりかなり減っています。

アウトレットシートなどの数

最後に、アウトレットシートや車いす席などの特殊な席の数を見ていきます。

席種 席数
通常席 53,940
アウトレットシート 6,090
スーパーアウトレットシート 1,065
車いす席 130
ボックス席等 32

アウトレットシートは、フェンスや手すりなどの障害物や通路によってコースが見えにくい席です。スーパーアウトレットシートはさらに見えにくい席となります。数えてみると、全体の1割を超える席がアウトレットシート・スーパーアウトレットでした。通常席のチケット価格と比べて2~3割程度安く、安いところでは半額以下で購入できるところもあります。F1のチケット代は他のスポーツと比べても安いとはいえないので、少しでも節約したい人にとっては良い選択肢だと思います。

その他、車いす席や複数人でゆったり楽しめるボックス席などが用意されています。ボックス席は高価格ですが人気があるのでしょうか。

残りの来場者はどこへ?

というわけで指定席の席数は約6.1万席だと分かりました。一方2024年の日曜日の来場者数は10.2万人と発表されています。残りの4.1万人はどこにいるのでしょうか?

まず、エリア内の好きな場所で観戦できる西エリア券があります。こちらはどのくらいの枚数チケットが用意されているか分かりませんが、相当数いるものと思います。

その他、専用エリアに入ることができるカメラマンエリア券や、VIPスイート・プレミアム、パドッククラブなどの高価なチケットもあります。こちらも枚数の設定は不明ですが、一般の指定席チケットではないチケットで入場する人もそれなりにいるのだと思います。そういえば旅行会社の観戦チケット付きツアーや海外からの来場者は座席の割り当てはどうなっているんでしょうか。流石に座席表は全席書かれているはずなので上記の6.1万席に含まれているとは思いますが。

チケット収入と開催権料

F1グランプリの開催には、F1側に高額の開催権料を支払う必要があることが知られています。近年はオイルマネーを狙った中東での開催やF1人気が高まるアメリカでの開催が増えており、F1の価値に合わせて開催権料も高騰しています。鈴鹿サーキットなど伝統的な開催地は開催権料が低めに設定されているという話もあります。しかしモナコGPの木曜開催といった特別扱いが無くなる一方で、中東でのラマダンやラスベガスでの時差・見栄えを考慮した土曜日決勝開催など新興開催地での特別扱いが増えてきており、鈴鹿サーキットもいつまでも安泰とは言えません。

2029年までの契約延長が発表されている鈴鹿サーキットでの日本GPですが、近年の物価高や円安により開催権料も高騰していると思われます。大阪もF1開催に名乗りを上げており、開催権料は交渉材料の1つになるかもしれません。そんななか、指定席のチケット収入は開催権料をどのくらい賄えるのか、ざっくり計算してみました。

全ての指定席を大人が購入したと仮定すると、チケット収入は約34億円となりました。5月1日時点のドル円相場で換算すると、約2100万ドルとなります。ここにカメラマンエリア券や西エリア券、金曜日券を加えると、ざっくり40億円(2600万ドル)といったところでしょうか。

開催権料は不明ですが2000万ドルほどと仮定してもかなりギリギリです。イベント運営にはあらゆるコストがかかりますし、パドッククラブチケットやF1公式グッズはF1側の収入になるでしょうから、来場者からのお金だけではとても持続的には開催できないと思います。だからこそ他国は自治体や政府からの財政支援を受けて開催しているわけで、大阪が「民間で運営すれば採算が取れる」と言っていたのはちょっと甘い考えに思えます。日本GPやフォーミュラE東京大会を岸田首相が訪れていることに少しは期待していいんでしょうか・・・。


というわけで今回は、2024年F1日本GPの指定席の席数を数え、開催権料とも比較してみました。日本GP継続のためにF1ファンとしてできることは、日本GPを現地観戦して国内のF1人気・モータースポーツ人気を盛り上げること、そして鈴鹿市などの周辺の自治体や住民に感謝することですね。

それではまた。

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